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もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙 今やってる仕事が100倍楽しくなる「アドラー」の12の教え 小倉広【感想】

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もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙 今やってる仕事が100倍楽しくなる「アドラー」の12の教え 小倉広【感想】

この本は、アドラー心理学をわかりやすく楽しく知ることができる本として活用できます。

ピーター・ドラッカーの「マネジメント」を「もしドラ」にしたように、アドラー心理学の「もしアド」版的位置になります。

会社を舞台に、上司のアドラーと主人公の若手社員の物語を通して、アドラー心理学を学んでいくことができます。

会社を舞台にしているので、会社員にとっては、すぐにそのまま考え方やアイデアに取り入れることができます。

もしアドラーが上司だったら(小倉広)


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こんな方におすすめ

  • ものの見方を知ってやる気をあげる方法
  • やりたいことだけやる方法
  • やる気と自信にみなぎる方法


もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙【感想】

この本では、アドラー心理学の中心的な概念である『勇気』と『共同体感覚』について、物語風に話が進んでいきます。
会社の上司ドラ(アドラー)と部下の主人公のリョウ君(サラリーマン)のやり取りが会社のよくある日常を切り取っているので、親近感が湧いてわかりやすく共感できます。

ここでは前半の『勇気』について整理していきたいと思います。

ポイント

1 「できているところ」に注目する。「できていないところ」は注目しない
2 多面的に意味づけて見る。ポジティブな面に注目する
3 無理矢理ポジティブに考えない。ネガティブな自分も、ただ見る
4 「やりたくない」ならやめる。「やりたい」ならやる。「やらされている」と嘘をつかない
5 「機能価値」と「存在価値」をごちゃ混ぜにしない。ありのままの自分を受け止める
6 不完全な自分をそのまま抱きしめて、自己受容する

①「できているところ」に注目する。「できていないところ」は注目しない

『勇気』の基本として、「できているところ」に注目するというのがあります。
これは、私たちは、「できていないところ」ばかりに注目してしまい、勝手に自分で自己嫌悪に陥ってしまい、悪いサイクルに入ってしまう傾向があるためです。
それでは、アドラー心理学のキーワードである『勇気』を得ることはできません。

『できているところ』に注目し、そこから『勇気』を拡大していき、良いサイクルの中に入るということが大切になります。


この本では、主人公のリョウ君が、毎朝ジョギングをするという目標を立てたにもかかわらず、寝坊してしまったりでほとんど実践できず落ち込んでいたところから話が始まります。

そこで上司のドラは、それを『負の注目』として『正の注目』、つまり「できていないところ」から「できているところ」に注目するように教えます。

「負の注目」をやめて、「正の注目」をすることで「勇気」がでる。

「週のうち2日しかジョギングができなかった」というダメな自分を責めるのではなく、「週2日も走った、それはすごいことだ」と思うことが大事ということです。

そうすることで「よーし、もっとやるぞ」という気持ちになれる。

この「もっと、もっと、やれる」という気持ちが『勇気』というおとになります。

例えは悪いが、「豚もおだてりゃ木に登る」という作戦です。
流行りの言葉で言うと「ソーン体験」や「フロー体験」ということになります。

「正に注目」するか「負に注目」するかは、自分で決めることです。

より『勇気』を持って、「フロー状態」に入るには、「正の注目」を選択するしかないですよね。

アドラーの『勇気』は、難しく考えずに、シンプルにハードルを上げずに、まず身近で基本的な「できているところ」を見つけるところから始まるということですね。
「豚もおだてりゃ木に登る」でOK!

【「正の注目」からの大切な流れ】

正の注目⇒自分には価値がある⇒勇気が湧いてくる⇒周囲の人々に貢献したい(共同体感覚)⇒貢献している実感⇒勇気をもてる
※「勇気」と「共同体感覚」は相互依存関係にある

②多面的に意味づけて見る。ポジティブな面に注目する


次は、多面的に見て、ポジティブな面に注目するです。

主人公のリョウ君は、会社で取引先に大事なことを伝えるのを忘れてしまったがために、大型受注の仕事がキャンセルになってしまい、しかも主要クライアントから出入禁止を言われてしまう。

明らかに「失敗」であるが、上司のドラはこれを「失敗」としてではなく「経験」と捉えると教えます。

そして、すぐに2人はクレーム対応に出て、最悪の出入禁止は免れることになります。

うつ病カウンセラーのエリスの手法:リフレーミング(物事を多面的に捉える)



ここで、ドラ上司は、円錐の見方について話します。

円錐は、横から見ると三角、底から見ると円。

では、どちらが本当で、どちらがニセモノか?

そう、どちらも本当ということです。

「失敗」も本当だが、「経験」も本当ということです。

今回のケースで見ると、「失敗」に注目する時間を少なくして、「経験」に注目する時間を長くする方が、エネルギーが高まるということ。

多面的に見る(リフレーミング)

多面的に見れば(リフレーミング)必ずできているところは見つかる(正の注目)


③無理矢理ポジティブに考えない。ネガティブな自分も、ただ見る

次は、ポジティブ思考の人は注意です。

無理矢理ポジティブに考えずに、ネガティブな感情にも向き合うということです。

物語では、通勤の満員電車の場面です。

本当に満員電車は不快で嫌な気持ちになりますよね。

特に夏場の汗だくの時などは考えただけでも嫌ですよね。

そんな時に、これまで学んだ、「正の注目」や「多面的に見る(リフレーミング)」で、「満員電車は最高だ!電車の中で考え事ができる最高の時間だ!」と、無理矢理ポジティブにはしない方がいいということです。

「注目」と「見る」ことを混同せずに、嫌な感情は目をつぶって「見る」ことをしないのではなく、ネガティブなものもしっかりと「見る」。

ネガティブな感情を押し殺してはいけない(自己一致)



そしてポジティブな面に「注目」することが大切ということです。

つまり、ネガティブな感情を「見ない」のは、「否認」「抑圧」「歪曲」していることになり、ネガティブな感情を押し殺すことになってしまうからです。

そんな時は、「また、やっちゃってるな。まっ、いっか」、「満員電車は不快、でも時間をムダにしたくないから本でも読もう」くらいの気持ちでいいということです。

ネガティブな感情を押し殺さずに対処するストック「また、やっちゃった、ま、いっか」くらいのものをいくつか準備しておくとよいかもです。

「傾聴の3条件」

【クライアント中心療法(ロジャース)「傾聴の3条件」】
①自己一致(ネガティブな感情を押し殺さない)
②共感的理解
③無条件の肯定的配慮
※現代カウンセリングの礎を築いたのがカールロジャースです。

参考

アドラー心理学の主要な理論の一つに心と体、意識と無意識などの分割はなく一つであるという「全体論」があります。「自己概念」と「自己体験」を一致させる「自己一致」というロジャースの考えは、アドラー心理学と極めて親和性が高いと言えるでしょう。自己一致をしながら、正の注目とリフレーミングをする。

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④「やりたくない」ならやめる。「やりたい」ならやる。「やらされている」と嘘をつかない

ここも、アドラー心理学の考え方の特徴的で面白いところだと思います。

つまり、「やりたくない仕事」をやっているとしたら、「やらされている」というのはウソで、自分が「やりたい」からやっているということになるということです。

「やりたくない」のなら「やらない」、「やりたい」なら「やる」、このどちらかしかないということです。

「誰もやってくれないから、仕方なくやります」は、その仕事をやりたいと同じ。
やらずにみんなに迷惑をかければいい。

「全体論」人間は自分自身の人生を描く画家である。

やりたいからやる(自己決定性)、やらされているはない。

ここは、「7つの習慣」の『第1の習慣:主体的である』にも通じるところですね。

参考

アドラー心理学の特徴的な考え方の一つに「自己決定性」というものがあります。問題の原因を他者や環境のせいにして自己正当化することをアドラー心理学は認めません。すべて自分が決めたこと。すべて自分が決められる。そのように考えるのです。
この考え方はよく誤解されがちです。その一つが「過去は一切関係ない」「トラウマはない」というものです。しかし、アドラーはそこまでの強い断定はしていません。アドラー心理学では「柔らかな決定論」という言葉をよく使います。それは、全か?無か?といった極端な断定ではなく「であるかもしれない」という柔らかな考え方を好む、ということです。ですから「過去は一切関係ない」のではなく、過去の原因は影響因としては存在するかもしれない。しかし、決定因は自己にある。そのように考えるのです。

⑤「機能価値」と「存在価値」をごちゃ混ぜにしない。ありのままの自分を受け止める

ここで、「機能価値」と「存在価値」という言葉が出てきます。

「機能価値」は「信用」、「存在価値」は「信頼」とも言えます。

つまり、仕事での経験や実績、能力といったことが仕事での「信用」、「機能価値」ということになり、人間性やその人自身の尊厳等、一人の人間としてゆるぎない存在であるということが「存在価値」ということになります。

例えば、難しい仕事に初めて取り組む新入社員は、仕事の成果として「信用」されにくいかもしれませんが、意気込みややる気等の仕事へ取り組む姿勢は「信頼」されているといったことがイメージできます。

機能価値(doing)と存在価値(being)を分けて受け止める。

参考

機能価値と存在価値という分け方はアドラー心理学の用語ではありません。しかし、アドラーの「勇気づけ」を理解するためにわかりやすい分類であるため、本書ではこの言葉を用いることにしました。
社会学者のフェルディナント・テンニースは共同体を二つに分類しました。目標達成を追求する営利企業に代表されるゲゼルシャフト(機能共同体)と、存続や安心感を追求する地縁・血縁関係に代表されるゲマインシャフト(価値共同体)の二つです。この二つは先の言葉を借りるならそれぞれに「機能価値」と「存在価値」を基盤に存在していると言えるでしょう。

⑥不完全な自分をそのまま抱きしめて、自己受容する

人は誰でも、得手不得手があります。

完璧な人はいませんよね。

その自分の欠点を人のせいにしていたり、自分で受け入れていないと、いつまでたっても先に進むことができないということになります。

重要なのは、不完全なところも自分で受け入れて、その先へ進み、弱みも強みもある自分を肯定することということです。

参考

この言葉を覚えておくがいい。『自己肯定』ではなく『自己受容』。いいかい『自己肯定』と『自己受容』は違うんだ。
「『自己肯定』には理由が必要だ。そして多くの場合、その理由は『機能価値』から引っ張ってくる。売上ランキング上位という『機能価値』を発揮している。だから『自己肯定』する」

参考

「一方で『自己受容』に条件は不要だ。弱さや不足がある、不完全な自分をありのまま受け入れる。それが『自己受容』だ。『人間だもの。弱さもあるさ。できないこともあるさ。失敗もする。でも、そんな自分をそのまま抱きしめよう』そうやって、飾らず自分を受け容れる。それこそがつまり『存在価値』を認めるということにつながるんだ。」

自己肯定と自己受容

もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙【感想】【実践ポイント】

実践ポイント

  • ネガティブな感情を押し殺さず(自己一致)に「正の注目」と「多面的に見る(リフレーミング)」ことでウソのない本物の自己勇気づけを始める
  • 「やりたくない」ならやめる。「やりたい」ならやる。「やらされている」と嘘をつかない
  • 『自己受容』で不完全を認めて勇気を持つ

もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙【感想】 まとめ

この本の前半パートである「勇気編」では、アドラー心理学の基本となる、ことを多く知ることができます。

そして、この勇気によって、どれだけ今の仕事に対する自分の気持ちが楽になるか、また楽しくなるかも感じることができると思います。

ここから、発展、応用させて、「共同体感覚」つなげていくことになります。

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もしアドラーが上司だったら〘勇気編〙 評価ポイント

ポイント評価
読みやすさ
実践しやすさ
知識の発見度
構成
総合
もしアドラーが上司だったら(小倉広)

もしアドラーが上司だったら 本の目次

本の目次

【もしアドラーが上司だったら】

プロローグ
第一章 自分を追い込んでも、やる気が続かないんです
第二章 失敗から目をそらすなんて、できません
第三章 カラ元気を出すのに疲れちゃいました・・・
第四章 やらなくちゃならない仕事が山積み
第五章 成績の悪いボクは劣っている。負けている
第六章 自分を追い込んで、やっとできるようになったんです
第七章 自分を勇気づける、次のステップとは何だろう?
第八章 誰かを喜ばせようとしても、無視されたりバカにされるんです
第九章 自分の意見だけでなく、存在までも否定された・・・
第十章 目の前の人のため、が共同体感覚なんですか?
第十一章 あなたを信じていたのに・・・
第十二章 課長なのに、頑張らなくてもいいの?
エピローグ ドラさん、チャレンジを続ける
あとがき

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